滑液包炎とは?症状や原因、起きやすい部位のなどの疑問にお答えします


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肩や肘、かかとなどが腫れ、痛みを生じている場合は、滑液包炎の可能性が考えられるかもしれません。

身体のさまざまな部位の外傷や使いすぎによって生じやすい滑液包炎ですが、そこにある滑液包は関節や筋肉や腱の動きをスムーズにする働きがあるため、炎症が起きると日常生活の支障になってしまいます。

今回の記事では、滑液包炎の症状や原因、起きやすい部位や疑問にわかりやすくお答えしていきたいと思います。

院長:伊藤良太
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滑液包炎とは?

滑液包炎とは、関節のまわりにある袋であり、内側の膜が関節滑膜に似た、少量の滑膜を含んだ滑液がさまざまな原因によって炎症を生じたものです。

※矢印の先の紫色のところが滑液包です。

滑液包は関節の摩擦軽減だけでなく、腱や皮膚にもあることがお分かりかと思います。

滑液包炎の原因

滑液包炎の原因には、日常生活の何気ない動作の繰り返しやスポーツによるケガが特に多く発生しています。

ここからは、滑液包炎の主な原因について見ていきましょう。

使いすぎ

滑液包炎は肘や踵、股関節や膝などのあらゆる部位にあり、負荷のかかる動きやスポーツによって使いすぎることが原因と考えられています

使いすぎにより腱や皮膚、そのほか周りの組織と滑液包に摩擦が生じて炎症が起きることと、その摩擦を少しでも緩和しようとする身体の反応により分泌液(よく言われる「水」)を出して対応しようとするのです。

「膝に水が溜まる」という現象も同じですので、詳しくはこちらをご覧ください。

膝に水が溜まる原因と対処法。

ケガ

滑液包炎は、打撲や捻挫などのケガによって滑液包に炎症が生じ、その後適切な施術・処置がないと慢性に移行し、長い期間滑液包炎を抱えてしまうこともあります。

ケガをしてしまうと痛みのある部分にだけ目がいきがちですが、ケガの経過はもちろん、最初とは違うところに痛みを感じた時には先生に伝えて、痛みの出る原因の説明を受けるようにしましょう。

疾病

滑液包炎はまれではあるものの細菌の感染によるものやリウマチの合併症が原因となることもあり、スポーツや無理な動きをしていない人であっても起こり得ることがあるのです。

持病のある方は定期的に通院されているかと思いますので、いつもとは違う症状を感じた時には先生に相談しましょう。

滑液包炎の起きやすい部位

滑液包炎の起きやすい部位というのは実は、身体のあらゆる部位になります。

滑液包炎の起きやすい主な部位を一緒に見ていきましょう。

肩には、腱板を衝撃から保護するための滑液が含まれた袋・肩峰下滑液包(紫色の部位)が存在しています。

肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)は腱板の保護以外にも、肩関節の動きを助ける役割があります。

肩に無理な力が加わったり、使い過ぎが原因となって起こる際には緊張や損傷をダイレクトに受けやすい部分のため、通常時でも滑液包炎を生じてしまうのです。

肩峰下滑液包についてはこちらをご覧ください。

五十肩が接・整骨院でも変化する理由とその治療方法とは?

肘の滑液包炎は、肘の肘頭の皮下にある滑液包が機械的な刺激や感染によって炎症を起こす症状のことを言います。

肘の滑液包炎は炎症を起こすことで皮膚が不自然に膨らんだり、強い痛みを感じることがあるでしょう。

股関節

股関節の滑液包炎は、股関節まわりに存在している大転子滑液包にて炎症が生じると、太ももの外側に痛みが出やすくなります。

股関節の滑液包炎は症状が進行すると、股関節の動きが制限されたり、我慢できないほどの強い痛みの範囲が拡大するため、早めに症状を理解し、適切な治療を受けることが大切です。

股関節のその他の痛みに関する記事はこちら。

股関節炎とは?症状と原因、よくある疑問にアレコレにお答えします。

骨盤

骨盤の滑液包炎は、骨盤のまわりに多く存在している滑液包が、感染や機械的な刺激によって炎症が生じた状態のことを言います。

骨盤の滑液包炎には主に、

などがあります。

※黒矢印の先にあるのは腸恥滑液包です。

股関節は歩くだけでも使われますし、運動となるとかなりの負荷がかかります。

痛みを感じた時にはすぐに原因を見つけ、適切な処置をしないと歩き方や身体の使い方も変わってしまいますので注意が必要です。

膝には膝蓋骨(膝のお皿のこと)があり、膝のお皿の前側部分にある膝蓋前(しつがいぜん)滑液包に炎症を生じて滑液が余分に溜まり、腫れと痛みが出る症状が出てきます。

膝の滑液包炎は痛みが出ないケースも多いため、自分自身での判断が難しいのも特徴です。

膝の滑液包炎は、皮膚と膝蓋骨の間の切り返しの刺激や外傷によって生じ、特に柔道やレスリングなど、膝蓋骨を床にすりつける動きが多いスポーツ時に発症しやすいと言われています。

膝に関する関連記事はこちら。

セルフケアで膝の痛みを取る方法と絶対に履いてはいけない履物とは?

くるぶし

足の関節の外くるぶしの前側部分の皮下に滑液包という袋が存在します。

くるぶしの滑液包炎はその滑液包が刺激や衝撃、摩擦や感染によって炎症を起こし、腫れと痛みが起こるのです。

またくるぶしの滑液包炎は出血が伴い、皮膚の内部に血が貯留することもあるでしょう。

足首捻挫から起こることもあり、最後まで施術・治療を受けてしっかり治しましょう。

足首捻挫についてはこちら。

足首捻挫が治らないのは後遺症かも!?リハビリとセルフチェック方法

足の指 

足の指に生じる滑液包炎は、局所が腫れたり、圧痛や皮膚の赤み、熱を持ったような感覚が長く続くこともあります。

足の指の滑液包炎は腫れや痛み、皮膚の赤みが出やすいことで、自身でも滑液包炎の判断がしやすいと言えるでしょう。

足の指の痛みに関する関連記事はこちら。

足の親指が痛いときに自己判断は危険!原因がわかれば痛み激減!

かかと

かかとに生じる滑液包炎は、

などが原因で生じ、さらには高所からの転落や硬い床や路面でかかとに衝撃を受け、打撲を起こした際にも発生することがあります。

アキレス腱やかかとの痛みについてはこちらをご覧ください。

踵骨後部滑液包炎はアキレス腱の痛みと違うの?対処法や治療法とは?

かかとの後ろが痛い原因とは?治療(対処法)と痛みを感じやすい人の特徴

滑液包炎は「治った」となるのか?

滑液包炎が「治った」となるには、

などの治療法が必要でしょう。

ただ、滑液包炎は治療を受けても繰り返し起こることがあるので、一時的に症状がなくなっただけで「完全に治った!」と捉えるのは早期判断と言わざるを得ない部分もあります。

滑液包炎の治療法

滑液包炎には、

といった治療があります。

滑液包炎のこれらの治療法について見ていきましょう。

安静と固定

滑液包炎の治療では安静を維持しつつ、患部を固定するための、

が行われます。

股関節や骨盤などは固定やテーピングは難しいものにはなりますが、そのほかの部位ではサポーターやテーピングでできるだけ負担をかけないように心がけましょう。

足首や足の指の場合には足底板(インソール)を使うと、さらに負担軽減となります。

当院が患者さんに提供している足底板(インソール)は《シダス社》のインソールです。

シダス社公式HP→https://sidas.co.jp/

上記の画像のインソールはオールラウンドタイプで、運動靴や革靴、パンプスなどにも適応し場面に応じた種類が豊富です。

足のつき方がよくない方は足底板(インソール)を入れた靴を履くと足が軽くなり、ビックリすることでしょう。

もちろんのことですが、安静と固定期間は日常から無理な動きは避けるのがマストです。

薬物療法 

滑液包炎の薬物療法には、

などがあり、滑液包炎の他にも痛風や感染症がある場合は、その治療が並行して行われます。

滑液包炎の痛みや皮膚の腫れが強い場合は、コルチステロイドという薬剤を滑液包に直接注射をすることもあり、この注射は特に肩の滑液包炎に対して多く行われているようです。

手術

滑液包炎の手術は、レーザーによる滑液包内の洗浄や、滑液包そのものを取り除いてしまう摘出手術が行われることがあります。

手術までになると日常より相当の痛みを抱えていることになりますので、手術は避けられるよう、早い段階での適切な行動を強くお勧めいたします。

滑液包炎の疑問

滑液包炎の疑問について…

「水を抜けば治るのか?」「湿布による治療は効果的なのか…?」

よくある疑問にお答えしてみたいと思います。

水を抜けば治るの?

滑液包炎は、余分な滑液が患部に貯留している状態のため、注射によって滑液を抜くことで皮膚の腫れや痛みの緩和となるでしょう。

ただ、滑液包炎を生じた原因が感染症やリウマチ、痛風などの場合は、滑液を抜く以外の治療も必要です。

一度抜いても再び溜まる場合には身体への負担軽減や使い方、動きのクセなどを見直すとさらに良いでしょう。

湿布は効くの?

滑液包炎への湿布は患部の腫れや炎症を鎮静化する働きがあるため、痛みの緩和に効果的です。

滑液包炎は、炎症による患部を冷やすことも重要で、冷湿布を用いた治療は一定の効果が認められています。

ただし、湿布による滑液包炎への対処は、痛み緩和のためには良いかもしれませんが、湿布だけでの対処ではあくまでもその場凌ぎになりますので、きちんと治療・施術を受けるようにしましょう。

滑液包炎にテーピングは有効?

滑液包炎になると、患部の痛みや腫れをかばうような動きや歩き方になってしまいますので、関節の動きを助けてくれるテーピングはたいへん効果的です。

セルフで巻くよりも接・整骨院の先生に教えてもらいましょう。

ただし、長く貼ると皮膚がかぶれてしまいますので、注意も必要です。

【まとめ】滑液包炎について

本記事では、滑液包炎の症状や原因、生じやすい部位などの疑問を解説してきました。

身体の各部位の関節や筋肉の動きをなめらかな状態に維持するため、身体の使い方や運動量の調節を行い、ケガの防止と使いすぎには十分注意を払いましょう。


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