胸郭出口症候群の重症化予防のためにテストで息苦しい症状が出ないかチェック!


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「胸郭出口症候群」という疾患はご存知ですか?

首から肩、肩甲骨、腕から指に痛みやしびれを感じていたら胸郭出口症候群の疑いがあります。

もし、腕に何かしらの症状を感じているのでしたら「胸郭出口症候群の重症化予防のためにテストで息苦しい症状が出ないかチェック!」をお読みいただき、適切な対処・行動をしましょう。

院長:伊藤良太
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胸郭出口症候群の原因とは

胸郭出口症候群とは運動や感覚を支配する神経や血管が圧迫や締め付けにより、腕の痛みやしびれ、頸肩腕痛(けいけいわんつう)症状が出る疾患です。

頚肩腕痛とは【首周辺や肩、腕から手にかけて、もしくは一部に筋のコリ、痛み、しびれを伴う症状の総称】です。

その神経や血管を圧迫する原因には、

  • 筋肉の硬さ
  • 怪我の後遺症(主に鎖骨骨折)
  • 頚肋(※頚肋とは胎児期の頸椎下部から出ている肋骨が無くならずに残ったもの) 

となっています。

鎖骨の脇にある鎖骨上窩(さこつじょうか)と言われるところを押して、骨の隆起や硬さがあれば頚肋の可能性が高いです。

青丸のところに骨のような固いものに触れれば頚肋の可能性があります。

黄色は鎖骨です。

日常生活での動作・姿勢では、

  • つり革を掴む
  • 洗濯物を干す
  • ドライヤーやシャンプーの姿勢
  • 無理な筋トレ
  • 重いリュックサックを背負う
  • スポーツによるもの(野球・バレー・バスケ・バドミントン・テニスなど)

などで症状が感じやすく、胸郭出口症候群の型には3種類あり、それぞれ

  • 斜角筋症候群
  • 肋鎖症候群
  • 小胸筋症候群

あります。

それぞれみてきましょう。

斜角筋症候群

肋骨から首に付く筋肉(黄色丸)が、いかり肩などの骨格や姿勢により神経や血管を圧迫して起きる型。

いかり肩は肩を張っている状態なので、鎖骨の上を通る神経や血管を圧迫する状態になりやすいために症状が出てきます。 

肋鎖症候群

肋骨と鎖骨の間が狭くなり(黄色丸)神経と血管を圧迫する型で、頚肋によるものが多く、なで肩でもなりやすい。 

最も手術による治療が多い型となっています。

小胸筋症候群

胸の筋肉と鎖骨に付く靭帯の圧迫(黄色丸)により起き、つり革などを腕を上げてものを握ったり、腕を上げる動作で症状が出る。

こちらもなで肩の人はなりやすい傾向があります。

胸郭出口症候群は重症化するとどうなるのか?

胸郭出口症候群が重症化するまでには段階があり、

軽度:ある動作や姿勢で症状を感じるも、症状が出るまでには少しタイムラグがある

中度:ある動作や姿勢で症状が出やすく、その姿勢を維持できない、行えない

となり、重症化すると、

重度:ある動作や姿勢ですぐに症状を感じ、しかも強い。安静にしていても症状が出ることもある

日常的な動作や姿勢が原因だと徐々に症状が出始めますが、寝方に問題があったり、急な動作などがきっかけになると突然強い症状が出る場合もあります。

胸郭出口症候群は薬とリハビリ、ストレッチで治す

胸郭出口症候群の治療法は

  • リハビリ
  • ストレッチ
  • 筋肉の弛緩

となります。

まずは出ている症状をできるだけ緩和する目的で薬や注射での治療です。

次に姿勢の改善や筋肉の弛緩を目的としてリハビリを行います。

筋肉を緩める方法の一つとしてマッサージもあるのですが、刺激が強すぎると首や鎖骨周辺の皮膚のすぐ下には神経や血管、肺を痛めてしまうのでオススメはしません。

マッサージ以外にも筋肉を緩める方法がありますのでお伝えします。

鎖骨下の筋肉を緩める

鎖骨周辺の筋肉を緩めると首の圧迫感が軽減します。

方法もカンタンですので、座って行ってみてくださいね。

  1. 鎖骨下を指3本くらいで軽く押す
  2. 押しながら肘を後ろに引きます
  3. 肘を後ろに引いたとき、押しているところが緩めば成功

指で強く押しすぎるとただ痛いだけなので、筋肉の硬さを感じる程度の強さで押しましょう。

鎖骨上の筋肉を緩める

次は鎖骨上、首周辺の筋肉へのアプローチです。

この場所は皮膚の下に神経や血管、肺がありますので、ゆっくり、軽く押すようにしましょう。

  1. 肘を曲げ、後ろに手を回す
  2. 指3本くらいで鎖骨の上を軽く押す
  3. 首は痛い方と逆を向く
  4. そのまま斜め後ろに首を倒す
  5. 首を戻し、押している指の筋肉が緩めば成功

一度では緩みませんので、5〜10回ほど行いましょう。

この方法は何かコトが起きてからでは遅いので「軽く押しすぎかな?」と思うくらいから始めてください。

あくまでも自己責任で行ってくださいね。

次はストレッチのご紹介です。

鎖骨と首周辺のストレッチ

ストレッチによるアプローチは安全で効果も感じられますが、痛みや症状が強く出た時にはすぐ中止してください。

ではご紹介します。

  1. 肘を90度に曲げて壁に当てる
  2. 身体を逆方向へ回転させる

動かす範囲は一度で大きくではなく、徐々に広げていきましょう。

2で鎖骨下の筋肉が伸びていれば成功です。

時間がある時に何度でも行っても構いません、気持ち良さを味わいながら行いましょう。

腕が息苦しい症状を感じたら要チェック

腕が息苦しいという表現は適切ではありませんが、腕全体が苦しい感じがあると胸郭出口症候群の疑いがあります。

腕が苦しい以外にはどのような症状があるのでしょう。

  • 腕を上に上げる動作や維持で腕のしびれや肩・腕・肩甲骨周辺に痛みがある
  • 買い物カゴを持つと腕に痛みやしびれを感じる
  • 肘から先の小指側にかけてうずくような痛みや刺すような痛み、またはしびれやビリビリ感がある
  • 感覚障害と手の筋力低下
  • 細かい作業がしにくくなるなどの運動障害
  • 動脈の圧迫が原因で、腕の色が白っぽくなり痛みを感じる
  • 静脈の圧迫が原因で、腕や手の血液の戻りが悪くなり青紫色になる
  • ボールを投げるとき、または投げた後に腕にしびれを感じる
  • 手のむくみや冷え
  • 握力低下
  • 腕のだるさ

などなど、感覚障害や筋力低下となると元の状態に戻るまでには少し時間がかかります。

日常生活でもかなりのストレスを感じることでしょう。

胸郭出口症候群のテスト

胸郭出口症候群のテストには4種類ありますので、心配な方は行ってみましょう。

アドソンテスト

  1. 症状のある方に首を向ける
  2. 首を後ろ(顔の方向では斜め後方向になる)に倒したまま深呼吸
  3. 首を斜め後ろに倒したときにしびれや痛みが出たら陽性

二人で行う場合には、手の脈拍も弱くなるのが感じられます。

ライトテスト

  1. 両肩と肘を90度に上げて曲げる
  2. そのままの状態をキープしてしびれや痛みが出れば陽性

ライトテストも陽性になると脈拍が弱い、もしくは触れなくなります。

症状が強く出ると腕が挙げられずに下ろすようになります。

ルーステスト

  1. ライトテストの姿勢で指のグーパーを3分ほど行う
  2. 行っている最中にしびれや痛みが出れば陽性

指のグーパーの間に肘が下がってくるので、肘の角度に注意して行いましょう。

エデンテスト

  1. 椅子に座って胸を張らせる
  2. 両手を後ろに回して下方に引く
  3. 2で痛みやしびれが出れば陽性

陽性になると手首の脈拍が弱くなる、または触れなくなります。

一人ではできないので、加減をしてもらいながら腕を後ろ下方に引いてもらいましょう。

胸郭出口症候群はストレスも関わってくる

胸郭出口症候群は頚肋の原因より他は、姿勢や筋肉の影響を受けても発症します。

常日頃から緊張状態が続くと、肩は脱力できずに筋肉は緊張していかり肩の形になりやすくなります。

いかり肩は胸郭出口症候群の引き金となりやすい状態ですので、肩肘張らずに程よい脱力感を保てる姿勢と環境の整えが必要です。

普段の家事や作業での負荷も筋肉への大きなストレスとなり、症状を誘発しますので、身体の硬さや精神的ストレスを感じたら何かしらの対応をしましょう。

ストレスをため込むと身体は次第に蝕まれて胸郭出口症候群に限らず、様々な症状を発症してしまいます。

胸郭出口症候群が長期化すると約25%の人に自律神経症状を伴うというデータもあります。

自律神経症状の症状では

  • 頭痛
  • 立ちくらみ
  • 不眠、
  • 胃腸障害
  • 全身の倦怠感

と一部の症状から全身に波及していきます。

できるだけ初期での対処、治療が必要なのです。

胸郭出口症候群は何科へ受診?

胸郭出口症候群は整形外科で診察を受けるのが一番近道です。

胸郭出口症候群と診断するには、上記のテストのほかに、

  • 医師による評価
  • 神経伝達検査や筋電図検査
  • MRI検査
  • 血管造影検査

などを行うのですが、頚肋以外の原因としては明確な診断の確定には至らないのが実情です。

先ほどのテストもあくまでも症状の確認であって、診断の確定ではありません。

頸椎ヘルニア、頸椎症、肘部管症候群、脊髄空洞症、その他腫瘍によるものとの識別ができれば、胸郭出口症候群の可能性がさらに高くなるのです。

胸郭出口症候群に効果的なツボ

胸郭出口症候群に効果的なツボですが、ツボは簡単に見つけられませんので大まかな位置で構いません。

効果的なツボは、

  • 中府
  • 気舎
  • 雲門

の三箇所になります。

いずれも強く押すと効果が高くなるというわけではありませんので、刺激の強さには注意です。

押して「少し痛い」程度にしておきましょう。

胸郭出口症候群に良い寝方

胸郭出口症候群は【朝起きたら症状を感じた】という始まり方も珍しくありません。

それは寝方によって、神経や血管を圧迫し続けたために症状が出てきたのです。

だめな寝方はこちら。

肩をつぶす寝方

この寝方では肩は潰され、肩はもちろん、肩周辺の圧迫となります。

横向き寝が好きな方は枕と頭、そして肩の位置に注意しましょう。

肩を下にして寝るのではなく前の方に逃して寝ると、肩の圧迫を最小限にできます。

肩をつぶさない寝方

肩は前の方に逃して寝る

この寝方は五十肩予防の寝方にもなりますし、朝起きたら首や肩が痛い…という方にはオススメです。

是非とも寝方も改善しましょう!

胸郭出口症候群と筋トレ

私の考えでは胸郭出口症候群の方には筋トレは必要ないと考えます。

なぜなら当院に通院の患者さんには一切筋トレをしていないにもかかわらず症状が改善しているからです。

筋トレよりもアプローチすべきは、姿勢と身体の使い方です。

デスクワークの肩は普段からの身体と机の位置関係を見直すことで、症状の緩和となります。

重いものを持ったり、作業をする方も物の持ち方や身体の使い方を変えるだけで患部にかかる負担軽減と、症状の緩和となるのです。

胸郭出口症候群にならないために

胸郭出口症候群にならないためには、日頃からの身体の使い方と寝方に気を付けることです。

同時に何かしらの症状を感じたら早期に良くなるための行動をしましょう。

「いつか治るだろう…」は通用しません。

なぜなら日常の中に原因があり、その原因にアプローチしなければ症状も変わらないからです。

我慢は禁物、身体に毒です。

良くなるために行動をしていただければと思います。


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